強がる少年に、拒まれても笑う。


涙袋が強調された優しい笑顔。


Child will be born to us


まだ顔色のさえない隊長が、急に外に出ると言った。

「いけません。あと三日は無理ですよ。」

「いや、用事があるんだ。」

辛いであろうに彼は無理に体を起こした。

「御身より大切な用事などありますか。」

半ば呆れた声で言って、隊長の体に毛布をかけた。

それでも彼は脇に置いてあった羽織を取って肩にかけ、立ち上がった。

「浮竹隊長!」

しかし一歩踏み出すのが関の山であった。

隊長はすぐにその場に座り込んでしまった。

「・・・隊長、早くお布団に。」

そう言って肩の羽織をとってやると、隊長は深くため息を吐いた。

「すまんな、朽木。」

隊長は素直に布団に戻って、毛布を頭からすっぽりとかぶった。

さて、何の用事だったのだろうか。

「久々に冬獅郎くんを見たいんだ。」

相変わらず、それは病床に臥せていても変わらない。

「そんなに好きですか。」

私は指で、毛布の隙間からはみ出た彼の白い髪を弄んだ。

この人は日番谷隊長を見かけるたびはしゃぐ。

「・・・俺の子供みたいな気がするんだ。」

真剣な声で言ったのは天然か、否か。

私は思わず笑ってしまった。

「おい笑うな!だって似てるじゃないか。」

頭をひょっこり出して、隊長は反論した。

当の本人が思いがけず現れたのは、その五分後だった。


まず雨乾堂の簾の向こうから、色気漂う女性の声が聞こえた。

次いで少年のまだいたいけな声。

私に爪を切られていた右手がぴくり、と動いた。

「浮竹!入るぞ。」

と同時に不機嫌そうな顔の日番谷隊長と、薄化粧の松本副隊長が入ってこられた。

「おおー!来てくれたのか!」

途端に浮竹隊長は笑顔になり、起き上がって枕元の鼠色の巾着から飴玉を取り出した。

「今日はこれだけしかないんだ、すまんな。」

「遠慮する。」

見事にそれを一蹴し、日番谷隊長は松本副隊長に合図をした。

松本副隊長は持っていた派手な躑躅色の包み、おそらく菓子折りを浮竹隊長の枕元に置いた。

「練り切りです、どうぞ〜。隊長が選んだんですよ。」

「いつも悪いな。そんなに調子が悪いわけでもないのに。」

日番谷隊長は相変わらずそっぽを向いている。

浮竹隊長との会話で盛り上がっているのは松本副隊長だ。


私は隊長が寵愛する、その真っ白な髪を持った少年を見る。

なるほど隊長と同じ髪の色。

薄緑の変わった色の目が、窓の外を物憂げに眺めている。

分かる気がする。隊長がこの少年を特別愛でるわけが。


彼らはそれからすぐに帰って行った。

最後まで日番谷隊長は飴玉を受け取るのを拒んでいた。

隊長は少しがっかりしたように笑って、二人を見送った。

「にぎやかだったなぁ。」

お茶の残りをすすって、彼はまた布団に潜った。

眉目美しい隊長は何も言わず、私の指先を撫でていた。

次に何を言うのか、手に取るように分かる。

「子供がほしい。」

遠まわしに求婚するような気の弱い人じゃない。

きっと天然だ。本心からそう望んでいるのだろう。

頷く。そして考える。

彼の思い描いている幼子の産声を、頬の赤さを、睫毛の長さを考える。

きっと私たちのそれらは寸分の狂いもなく一致しているだろう。


「お前の兄貴が泣いて喜ぶだろうな。」

彼は笑う。将来を思って笑う。

見越した未来には、あんな少年。


Fin


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なんかタイトルがびみょう・・・
次はあっま〜いの書きたいです。


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