年上なのに、だいぶ子供っぽいと思うこともしばしばあった。


でも誰より繊細だということもわかっていた。


そして誰よりも不憫な結果を背負っていることも、考えずにはいられない。


恋情を込めて


「苦しくはありませんか。」

私は目を閉じ、布団に包まっている隊長に問いかける。

隊長は何も言わずただ頷いた。

「寒くはありませんか。」

私は隊長の額に浮かぶ汗をそっとぬぐってやった。

隊長はまた何も言わずに頷いた。


昨夜、隊長が酷く青白い顔をして私の部屋にやってきた。

一護達が帰った翌日だったために、私は彼らに何かあったのかと心配になった。

だが心配すべきは隊長の体だった。

隊長は障子にもたれかかるようにして、その場にうずくまった。

すぐに駆け寄り、彼を支えたときに感じた温度が異常に高かった。


「なぜ、私だったのですか。」

今はもうだいぶ熱の下がった隊長の、頬に触れた。

「昨夜、なぜ私を頼ったのですか。」

隊長は答えようとはしない。

眠っているようで、起きているのだ。

言葉を発するのが辛いわけではない、ただ発しようとしていないだけだ。

それはただのわがままだ。

答えたくないから答えないという、彼のエゴだ。


「・・・朽木。」

薄目を開けた隊長が、私を見ていた。

彼は布団から右手を出して私の髪の先に触れた。

もう少し傍に寄ってやると、彼は手を伸ばして私の瞼に触れた。

まつ毛が彼の親指に触れているのがわかる。

「浮竹隊長・・・」

堪えきれず、名前を呼ぶと彼はその手を元に戻した。


「瞼が腫れているぞ。」

急に、隊長が切り出した。

「ええ。存じております。」

再度、隊長の手が私に伸びてきた。

そして今度は私の首を掴んで引き寄せた。


「そんなに愛しいのか。」

こんなに間近で隊長の顔を見たのは久しぶりだった。

以前より多少やつれてはいたが、何ら変わりのない真剣な顔であった。

「・・・誰のことです。」

「とぼけるな、一護君のことだ。」

どうしてそんな真剣な顔で聞くのか、その理由は避けて通れぬ道だ。

今はどうであれ、昔の兄様が知ったら激怒されるであろう隊長のお気持ちだ。


「ええ、少しだけ。」

私の首に添えられていた隊長の手が、私の背を撫ぜながら降りていった。

隊長の目は疲れたようではあったがしっかりと私を見据えたままだった。

「海燕殿と似ているのです。」

「ああ、そうだな。」

隊長は昔を憂うように小さく笑った。

私も一瞬だけ笑って見せた。


隊長は私を愛しく想ってくださるから、こんなことを聞くのだろう。

それを自覚したのは昨夜だった。

隊長がうずくまり、私が駆け寄るとその口からは私の名が聞こえた。

そして私の手を離すことなく四番隊の者達を困らせた。


私はそれがこの上なく嬉しかったし、恥ずかしかった。

想われていいのかとうろたえた。

一瞬、彼の病状を忘れるほどであった。


「朽木。」

彼のこの声にどれだけの意味と力量が込められているのか。

私も想っていいものか。

「朽木、」

想っていいとしたら、彼と相応の恋情を込めるべきか。

もしくは病気の彼のためにそれ以上の力を?

「俺の妻になれ。」

やはり来た、答えを出していないと言うのに唐突だ。

殿方の愛し方を知らず、私はいたいけだ。

遠くから慕い、その存在に落ち着くことしか技は無い。


それでも彼はゆるしてくれるだろうか。

それだけで、私は報われてしまうのだろうか。

Fin

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浮ルキがあまり出回っていないようなので、自給自足で。
大好物なんだけどな〜。


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