ごめんね朋ちゃん、私ね。


ありがとう朋ちゃん、私ね。


遠い憧れに期待!


二年経った。

もう十分すぎるくらいに私は想った。

更に伸びた彼の身長は私をとうに越し、背伸びしたってきっと届かない。

残念ながら、私は未だに想いを伝えられてない。


「あれ?桜乃、部活は?」

下駄箱で靴を履き替えるのに手間取っていると、朋ちゃんが駆けてきた。

二年前とはだいぶ印象が変わったな。

クラスが違うからあまり見かけなくなってしまったし。

ツインテールは下ろされ、毛先が軽くなっている。

目元にアイラインが引いてある。今日はデートなんだ。

「今日はコート整備で無いの。朋ちゃんは?」

朋ちゃんの頬が赤くなる。

「そのー、あれよ・・・ほら、」

目を泳がせて朋ちゃんは言葉を探した。

朋ちゃんは“リョーマ様”をやめて、他校の男の子と付き合っている。

人のよさそうな、おっとりした顔の人だった。

リョーマくんとは対極的で、ちょっとびっくりした。


「そっか、いいなぁ。」

私は朋ちゃんに微笑みかけた。

彼女は言葉を詰まらせて、眉をひそめた。

朋ちゃんは性格も彼氏の影響からか、控えめでより女らしくなった。

時々幸せそうに彼氏の話をしてくれる朋ちゃんはかわいい。

「で?桜乃はまだ“リョーマくん”?」

唐突にそんなことを聞いてくる朋ちゃんに圧倒されて、私は苦笑いした。

「笑ってごまかさないの!好きなんでしょ?!」

昔のように一歩、二歩にじり寄って質問をする。

「え?!あっ、うん!」

私は思わず頷いてしまった。

朋ちゃんは大きな目を更に大きくさせた。

「まさかまだ好きだって言ってないの?二年経ったのに?まだ?!」

朋ちゃんは大きなため息を吐いた。

心底呆れてる。

だってそうだよね、朋ちゃんはじれったいのが嫌いだから。

「リョーマくんとはきっと今年でお別れだよ。」

驚いて顔を上げると、朋ちゃんと目が合った。

「海外からたくさんスカウト来てるって。今すぐにでも、って話も出てるみたい。」

そんなこと聞いてないよ、私。

いつかは行ってしまう、と途方もない未来のことばかり考えていた。

朋ちゃんは私の両肩を叩いて言った。

「海外なんて行ったら、もう一生帰ってこないかもしれないんだよ!」


アメリカかな、ヨーロッパかな。

たった15歳の日本の男の子が海外でプロデビュー。

憧れるな、すごいな、きっと世界中の注目の的になるよ。

ああでもまた、遠くなるんだね。


朋ちゃんもせっかく励ましてくれたんだし、もう言おう。

どうせ行ってしまうんだから、気まずいことも無いよね。

自分で自分に言い聞かせて、私はしっかり拳を握る。

結果はどうでもいいから、せめてリョーマくんに覚えておいてほしい。

たまにふと、あんな方向音痴の女が居たなって思い出してほしい。

それだけでいいの。


校門を出ると高級外車の傍らで、おじさんが一人の男子と話しこんでいた。

通り過ぎようとすると急に声をかけられた。

「竜崎!」

どうしよう、リョーマくんだ。

「竜崎、ちょっと!」

振り返るのに躊躇していると肩を掴まれた。

否応なしにリョーマくんと目が合う。

さっきは決心がついたのにもう揺らいでる。

いつも、彼を見るとだめなんだ。いつも。

「オッサンごめん。俺帰るッス。」

リョーマくんはおじさんに手を振ると、私の手首を握った。

緊張している暇もなく、私は彼に引っ張られて走っていた。

「ちょ、ちょっとリョーマくん・・・!」


ある程度、学校から離れるとリョーマくんは止まった。

「あのオッサンしつこい。」

息なんか切らしてない、冷めた声で言う。

私は混乱してしまっておどおどすることしかできない。

「毎日のように学校まで来て、海外の話持ちかけてくるんだよ。」

スカウトのことだよね。

ピカピカの高級車、ブランド物のビジネスバック。

お金持ちそうなおじさんだった。

「リョーマくん、それって・・・」

「断ったよ。他のも全部。」

リョーマくんはさらっと言った。

「じゃあプロには」

「ならない。」

それを聞いた途端、私は安心してしまった。

本当ならプロの道を勧めるべきなのに。

活躍してほしいって心から願ってるのにね。

「あのね・・・っ」

朋ちゃん、私やっぱり言えないよ。

だってまだこんなに近くに居るんだよ。

「リョーマくんが外国に行くとき私、伝えたいことがあるの。」

それはあくまでプロデビューするときの話。

私のことはただの記憶の一部にしてほしいから。

「ふーん。待ってます。」


二年経っても、十年経っても、彼は私の憧れなんだろう。

たった二年で告白するなんておこがましいよ。

まだ彼の知らない憧れのままで留めておきたいの。


でもちょっとだけ、自分の未来に期待してる自分が嬉しいんだ。

成長したって信じてる。


Fin


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未来リョ桜初めて!リョ桜久しぶり!
本誌でのリョ桜にぶったまげたから挑戦しました。


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