君の声に無反応、



君の視線に気付かないふりをした。



君の優しさに付け込む意地の悪さがかっこ悪い。



I am crazy about her

廊下で向こうから来る友達と話す彼女を見つけた。

あ、と思ったけどなんとなく声をかける気がしなかった。

恥ずかしいとかじゃない。

俺が彼女にぞっこんだと、彼女に気付かせたくないんだ。

(もっとも、鈍感な彼女が気付くなんて皆無だけど。)



目をできるだけそらして、手元の教科書を見るふり。

それでも十分視界に収まる華奢な脚。

彼女は俺に気付いてるか。

気付いてるだろ、だってあいつは俺を好きじゃん。



少しだけ彼女を見てみる。

用心深く、慎重に。

長いみつあみは今日もきれいに結ってある。

そのみつあみはゆらゆら揺れて、俺はその場に立ち止まる。



(気付いてないじゃん。)



彼女は友達とのはなしに夢中。

期待してた俺がバカだったのか。

そのまま彼女は廊下を友達と歩いて行った。



こんな近くに居るのに気付かないなんてあいつも鈍感すぎ。

せめて転ばないようにしろよ。



俺は動く気がしないので、壁に寄りかかって息を吐いた。

なんかやけに疲れたな。

肩がすごく重い。



恋ってこんなに重いもんなのか。



恋なんて女子ばっかり好きなものと思ってた。

こんなにずっしりと重いもんだとは思いもしなかったよ。

あんな鈍感で天然でへっぴり腰な女子なんてすぐ夢中にさせられると思った。


正反対じゃん。

俺ばっか夢中。



もうヤケクソだ。

後ろを振り返れば遠くに立ち話してる彼女がみえる。

今しかない。

かっこ悪いなんて思わせない。

そう思う暇なんてないくらいに夢中にさせてやる。



少し小走りに、だんだん本気で。

情けないくらいのスピードで、彼女をさらいに。



「竜崎!」



近くまできたら声をあげて存在を見せつける。

彼女は驚いてキョトンとしている。

その真っ白な額にそっとキスして。

勇気があります、そう証明。

それでも俺の息は荒い。



「・・・リョーマくん!!!」



彼女の真っ赤になる顔も、俺の名を呼ぶ声も、

全部感じとってそしてうつって。

俺の顔も火照ってくる。

それを気付かれないように彼女の手を引いて走って階段を駆け上がっていく。

周りの人がみんな見てる。

でもそんなのは気にしない。



そして立ち入り禁止の屋上に出た。



彼女の息は荒い。

俺の息はもっと荒い。



「ごめん。」



俺はなんとなく謝る。

彼女はまださっきとおんなじ顔で俺を見てる。



その顔を見ていられなくてその場に寝っころがってみる。

それでも俺の首には汗が伝う。

彼女のみつあみが風に揺れるのがわかる。



「あの・・リョーマくん?」



心配そうなその声もすごく好きだと。

そう伝えるために、俺は駆け落ちまがいのことをした。



「ごめん、」



顔に腕を乗せて表情を読み取られないようにした。

そして俺の隣に座るように促した。

彼女はそれに素直に従った。



「竜崎のみつあみ俺、ほんとは好きなんだ。」



もういいんだ。

俺のプライドが彼女に通用しないことくらい既に承知済み。

だから逆に都合いい。



彼女のみつあみを軽く触る。

拒絶しようとしない彼女。



「あんたの顔も、においも、性格も全部好きなんだよ。」



目を見て、やっと言えた恥ずかしい台詞。

これ言うために生きてきたみたいに満たされてる。



「・・・・」



反論なんてさせない聞きたくない。

そこで俺の言葉に流されててよ。



俺だって自信ないんだよ。

あんたに嫌われないかとか、あんたが幻滅しないかとか、

計算なんてできないんだよ。



仕方が無いから苦手な暗算を使う。



途方もない莫大な数を、掛けて、割って、足して、引いて。

たくさんの間違いをした整数を読み上げて、



俺はその数を彼女の理想と仮定する。



それが正しい確率なんて無いに等しいのに、俺はそれを彼女に重ねる。



「ありがとう。」



彼女はそう言った。

恥じらいながら、でも笑いながら。



それを否定するほどの勇気と余裕なんてない。

俺は彼女にキスして抱きしめて、



そして俺のかっこ悪さをあんたに思い知らせてやる。



それにあんたは耐えられるのか。



Fin

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今は閉鎖しちゃった、お友達のサイトに捧げたものです。
徹夜でがんばってつくったんです。
いや、もうほとんど寝てたけどね。


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