あなたは頭がいいから、



ただの男に成り下がらないような、ずる賢い恋愛をする。


Come together


たったの30分で、控え室は水浸しになってしまった。

私たちの部室だったらいいけど、さすがにやりすぎだわ。

あとで大会の委員会の人に怒られちゃうかも。

それでも平気な顔して、パソコンとにらめっこしてるヒル魔くん。

少しは節度を守ってください!


打ち上げの後始末を始めてから、15分。

びしょ濡れだった床も壁も、元通りになった。

ヒル魔くんの持ってきた、大きな樽の中身が水だったからよかった。

もちろん素直には喜べないのだけど、彼だったら本物のお酒を持ってきかねない。

当の本人はまるで私が居るのに気付いてないかのように、イスに脚を組んで座ってる。

「ヒル魔くん、掃除終わったけど?」

少しだけ威嚇するように私は聞いた。

ヒル魔くんは何も答えずに、そのまますくっと立ち上がる。

そして、それがあたかも普通であるかのように私に言う。

「じゃあ帰るか。」

「へ?」

私の素っ頓狂な声の後に、ヒル魔くんがパソコンを閉じる音がした。

そこで初めて彼は私を見る。

「は?帰らねえの?」

彼は珍しく不思議そうな顔をしている。

「え・・・一緒にってこと?」

私の言葉のすぐあとに、ヒル魔くんは合点がいったような顔をした。

また弱みを握られる気がした。


「ほほう!姉崎サンは、俺と一緒に帰りたいわけだ!なるほどねぇ・・・」

「な、何でそうなるのよっ!」

言い争いなんてする元気は、私にも彼にも残ってないはずなのに。

わざとヒル魔くんは、私たちの言い争いを誘発するように煽ってくる。

あまりに方法が巧みだから、自ずと好戦的になってしまう。

「第一、待ってたのはヒル魔くんじゃないの!」

「俺は最初からお前と帰るつもりだったからな。」

「・・・・」

あまりに正直な答えに言葉が詰まってしまった。

反論するにはちょっと気が引ける。


本当は、すごく知りたい。

彼が私と一緒に帰る理由を、それは罠なのか否かとか。

やけに無邪気な挑発のわけを、少し素直なそのわけを。

「急に黙んな。」

いきなり私が無口になっていじめがいがなくなったのか、ヒル魔くんが言う。

そう言われると、何をしゃべったらいいのか分からなくなる。

結局何も言えないまま、私はヒル魔くんの言葉を待った。

微妙な空気が喉をつまらせる。


ヒル魔くんは私が困っていることをよそに、パソコンをカバンにしまっていた。

「で、帰んの?帰んねえの?」

「帰ります、当たり前のこと聞かないで。」

やっぱりつい、つんけんした態度を取ってしまう。

私が折れればいい話なのに、この人だけには負けたくない。

「でも一緒には帰らない。」

「あっそ。」

思ったよりはやく、ヒル魔くんは引いた。

そしてそれ以上なにも言わないで、彼はカギを私に投げてよこした。

きっと「部屋の忘れ物ないか確認して、それ返しとけ」って意味なんだろうな。

ヒル魔くんは荷物を持って部屋を出て行ってしまった。

怒らせたのかな、あんまりに私が嫌な態度を取ったから。


「ヒル魔くん!」

私は部屋のドアを開けて彼の名前を呼んだ。

廊下の向こうにも、階段の途中にもヒル魔くんは見当たらない。

なんて速さで帰るのかしら。

やっぱり明日の部活で謝ろう、許してくれるかな。

「呼んだか。」

いきなりヒル魔くんの声がした。

そっちを見やると、ヒル魔くんが自販機の前でコーヒーのふたを開けていた。

彼の顔を見たらやっぱり何も言えなかった。

でも気まずくない、とても不思議。

「何だ?俺はもう帰るぞ。」

やっぱり一緒に帰りたいな。

でも私のプライドが自発的にそう言わせないしな。

「カギ。どこに返せばいいか分からないから一緒に来て。」

考えた末に私はそう言った。

きっと彼にはお見通しなんだろう。

「ほーう・・・なるほどな。」

ほら、バカにしたように言われた。

私は荷物を持った。

「何よ、本当に分からないのよ。」


Fin

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久しぶりです、ヒルまも。
まもりってこんなに頑固なのかな(笑)


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