雨のなかを、
傘もなく、
一人で歩くようなあの人がすきです。
お節介の傘と水曜日
部活後、
霧雨の振る中、私はアスファルトの濡れた匂いを感じた。
たまに傘を持つ手を変えながらゆっくりと歩いた。
そしてゆっくりとあの人のことを考える。
嫌いで嫌いで仕方なかった横顔が、今じゃ凛々しく。
たまに私の髪を掠る指先がすきで。
脚、長くて細いよね。
走ってるときの脚も、机にのせる脚も。
全部すき。
すき。すき。
さっきより雨が強くなったかな。
肌に優しく馴染んでいた湿り気が、いつの間にか痛くなっていた。
ローファーのなかに入り込む冷たい水滴。
それさえもあの人と一緒だと幸せだといえるのに。
正直、アメフトには勝てない。
皆が帰ったあとも一人で鍛えてるのをしってるよ。
荒い呼吸が聞こえて、私が無力なのを受け止めた先週の火曜。
それでも。
それでも、あの人は私が必要だと云った。
今週の月曜だった。
「糞マネ。」
私が想ったときにあの人はここに居た。
彼氏らしいことをするじゃない。
外面は無機質そうなのに。
「ヒル魔くん。」
傘を差さず、強くなった雨を身体に受ける彼。
仕方が無いので傘を差し出してあげる。
彼は傘の中に入った。
「風邪ひいたらどうするの。」
身長差に合わせて高く上げる傘のほうの手。
そして辛いその手を我慢しながら聞いた。
彼は何も言わなかった。
「忘れたら私に言ってよ。」
彼は鞄を持ち直し、私を見た。
挑発するような表情に、私も眉を上げた。
「お節介だ。」
その言葉にカチンときたので高く上げている手を下ろした。
彼は雨に打たれ始め、だんだん濡れていった。
恨めしげにこちらを眺める彼を得意げに私も見た。
彼は何を思ったのか、私の手を掴み傘を二人の頭上にかざした。
彼の手が意外に冷たくて、私は身を震わせた。
逆に私の手は暖かいので、傘の柄を握る力を強めた。
「・・これでいいだろ。」
あまりにこの格好が恥ずかしいので首をふると、
彼は笑った。
あ、笑顔もすき。
その言葉は一生云えない。
素直になれなかったのは今週の水曜日。
即ち、今日のことです。
Fin
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これはヒルまも第一作目!
ヒルまものシチュエーションって難しいです。
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